空港出口のドアが開いた瞬間、漂うイスラミック・スメル。
あゝとうとう降り立ったのか。
かの約束の地、パキスタンに。
一人だったら行くのは我が生涯ずっと先、はたまた一生行くことはなかったであろう。
きっかけをくれたTにはサンガツしとく。
出口での出待ちはエグかった。
残念ながら写真はない。刺されそうだったから。
バックパックを背負って出口をきょろきょろしていると
見られる見られるワイのこと。
そんなにYERROW MONKEY が珍しいのか。
動物園の檻の中の動物もこんな気分なのか。
そういえばウルムチで助けてくれた中国人ニキもどっかに消えてもうた。
最後に挨拶くらいさせてくれよ水くさい。
そんなことを考えながら歩いていた矢先
正面で中肉中背のメガネと120kgくらいありそうなファットマンの二人組がこっちに向かって手を振っている。
そう、彼らがTの大学からの友人、AとCだ。
3人合わせてTAC。
何の資格をワイにくれるんや。
ジェットストリームアタックでもしてきそうやな。
二人と握手、ハグを交わして定型文の挨拶を添える。
これは何度かやった後に気付いたのだが、
彼らムスリムは右手で握手をし、左手側を相手の肩に手をまわすようにしてハグするのが慣例だ。
もしイスラム圏に出向くニキには是非とも覚えておいて欲しい。
ネキは宗教上の理由でしない方が良い(トラブルの元となる)ので要注意。
早速AとCと駐車場に向かう。

だがそれはそれとして
旅行者として忘れてはいけない緊急クエストがある。
SIMカードの調達だ。
こいつがなければ翻訳もできない地図も機能しないから、一人の場合は結構なピンチに陥る可能性がある。
大抵の空港には出口のあたりにSIM屋があり、そこで必要日数分のSIMカードを買って装備をするor予め日本からポケットWi-Fiを持っておくものだが、
なんとパキスタンにはどの空港にもSIM屋がないのだ。
どうやら街中にしかないらしい。
そんなんきいてねぇよ。
仕方がないのでSIMなしで、そのままCの車に乗車して街に向かうことになった。
ところで、日本とパキスタンの時差は4時間。
日本が朝9時の就業時間には、パキスタンでは朝5時。
これで日本時刻で朝から会議が入ればどうなるか。
そう、終了のお知らせ。
社不のワイにはきつスンギ。
気温はクリスマスのこの時期、イスラマバードの気温は昼は10〜15℃、夜に至っては5℃以下で場合によっては氷点下になる。
逆に5月なんかは50℃を超えるらしい。
寒暖差おかしいやろほんま。
まぁウルムチより100億倍マシだから妥協する。
閑話休題、時刻は正午過ぎ、体調は前日よりはマシなものの、ここまで関空から時差含め約27時間移動をしていたため、体調は当然良くない側にメーターが触れている。
無茶をすると速攻体調メーターがEに振り切れて死にそうだ。
可及速やかに今日の宿に直行したいところだが、AとCからイスラマバード案内するでみたいな感じで言ってくれたので、さすがに断れず好意に甘えることにした。
まず連れて行ってくれたのは、なんとも綺麗なショッピングモールに併設されているおしゃれなカッフェ。

おいおい、パキスタンってこんなにキレイな建物あるのかよ。
想像の上を超える綺麗さでイメージと違った。
無論、この甘い幻想はすぐにぶち壊されることになる訳だが。。。
このカッフェがある区画はブルーエリアといい、警備兵も多くイスラマバード内でも非常に治安が良い場所とされる。
確かに街中には緑も多く、街も静かで最初抱いていた印象とはかなり違う。
※誠に遺憾ながら渡航1ヶ月前の11月中旬頃にこのブルーエリアで大規模デモがあり、複数の死者と大量のケガ人と逮捕者を出したらしい。治安が良いとは一体…??
バックパックとPC関係が入った肩下げバッグを持って入店。
ウッドテイストの店内に清潔な空間、暖房もガンガンに効いてて最高だ。
少し腹が減ってたので朝食(なぜか正午なのにまだあった)でチョコバナナなんちゃらみたいなものとチョコレートスムージーを注文した。

料金は確か合わせて2000PKR(パキスタンルピー)、日本円で1200円くらいしたのでひょっとしなくてもこの店は外人向けでかなり高いのではないだろうか。
出すよと行ったのだがAが奢ってくれた。
なんでも、外人は全員ゲストらしい。
サンキューガッツ。
その後ドライブをしながら事務所に向かって行った。
途中ガソリンスタンドに寄ったがレギュラーが260PKRで140円くらいだったので、日本よりガソリンが全体的に高い印象だった(当時日本は130円ほどだったはず)

ちなみに、この時のレートは1PKR = 0.55円ほどだった。
ガソリンを入れている間に、薄汚れたガソスタニキがチョコレートでコーティングされたホールケーキ(切りかけ)を持ってきてくれた。
メリークリスマスらしい。
お前らイスラム教やろ。

どうやらくれるらしい。
ちょっと気になったので食べたい気持ちはやまやまだったが、さっきの朝食と体調の悪さで腹がいっぱいだった。
仕方なくそのケーキを手放した。
ケーキはCがガソスタの弊に放置してた。
「大丈夫なんかそんなんで」って聞いたら、Cが「こんなん普通だから大丈夫」って笑いながら言ってた。
日本やったらポイ捨てはブチギレ発狂不可避やぞこれ。
そんなこんなもありながら、AとCの会社の事務所にむかう。
途中で、金を両替したかったのでATMに連れてってもらった。
キャッシングをしようと思ったのだが、またまたトラブル発生。
ほんまトラブルしかないなこの国は。
持ってるカードが全てキャッシング拒否。
つまりPKRを引き出せない。クソ。
Aにこのことを話してAにATMでお金を下ろしてもらい、レートの金額で日本円を両替してもらった。
この時まだSIMカードなかったから両替所の位置なんて分かるわけもないし、もしAとCいなかったらこれどうなってたんや??
ちなみに後から調べた情報によると、パキスタンのATMではほとんどの日本で作成したカードはキャッシング拒否されるらしいので行く人はご注意を。
※余談の余談で、日本で作成のカードでATMで裏技で強制的にキャッシングができる方法が動画で上がっていたのだが、難易度が高いのと最悪カードがATMに飲まれて詰むリスクもあるので正直どうしようもない時以外はおすすめできない。次行った時やってみて成功したら追記するかも。
無事PKRもゲットし、車を走らせること15分ほど。
なんかただでさえデカい区画にさらにデカい建物ばっかなエリアに入った、なんやここ。

と思ったらレッドゾーンというエリアで、各国の大使館や大統領の住む家がここいらに集結している、パキスタンで最も治安が良い場所らしい。
おいおいそんな敷地内にあるおまいらの事務所の家賃はどんだけすんねん。
もしかしてこいつら富豪なのか…?
ええなぁほんまに。
そして到着。
場所はガチの一等地。
クアラルンプールにあるペトロナス・ツインタワーのミニ版みたいな外見をしている。
こら高いで。
家賃聞いたら分譲みたいな感じで2000万ちょっとらしい。
パキスタンの平均年収は2万円ほどと言われている中でここを拠点にするってよっぽどやぞ。
敷地に入る前に警備兵が数名いるが全員自動小銃を装備している。
忘れていたが、ここはパキスタンなのだ。
国全体として治安が良くないということを嫌でも思い出させる光景だった。
車を停めてエントランスでも自動小銃を持った警備員がお出迎え。
こええよ。
エントランスを超えエレベーターで9階へ。
やっと事務所兼Cの自宅に到着した。
ファっ!? でかすぎやろ、部屋が3つくらいあって全体で70平米ほどだろうか。


ベランダからはイスラマバードにあるクソデカ湖が目の前に見える。

なんていい部屋なんだ。
疲れたワイはクソデカソファーに転がった。
材質も申し分ない。
パキスタンでこんな思いができるなんて思ってもみなかった。
ほどなくして知らないニキが3人ほど侵入してきた。
どうやらAとCの同じ会社の仕事仲間らしい。
挨拶とハグを交わし軽い談笑。

15分も経たないうちにいきなり始まるはDJ会。
同時に到着したのは大量のビール缶。

…ん?ビール???アルコール????
おいおい兄弟、ムスリムなのに酒飲んで大丈夫なんかぇ?
Aいわくこっそりだったら大丈夫らしい。
見つかると結構やばいらしい。
これは余談だが、パキスタンはかなり厳しいイスラム教(最も厳かなシャリーアほどではないが次くらいに厳しいらしい)なので、酒はもちろんクルアーンに反することには(表向き上)非常に厳しいのだ。
逆にマレーシアやエジプトなど緩いイスラム圏ではガブガブ酒飲んでるし礼拝も1日5回してない。
実際そんなんをワイもクアラルンプールやペナン島では沢山見てきた。
ともかくそんな中で酒を、それもムスリムや外人が飲むのは御法度なのである。
見つかったら正直どんな目に遭うかわからない。
罰金で済めばラッキー。
だがこいつらときたら。
ガブガブのんどるやないかい。
で陽気になってガンガンクラブミュージックかけてるし。

お前らほんまに仕事できるんか?
で、お前も飲むか?って言われたらそら当然飲みますとも。
だってワイ、ムスリムじゃないもんね。
しかもパキスタン国内でしか生産されてない幻のビールなので。
某有名旅系Youtuberさんのようつべでみたわこのビール。
てかなんでパキスタン産のビールがあるんだよ。おかしいだろ。
なんとなくこの時点でこの国の歪さをひそやかに肌で感じつつあったワイであった。
気になるビールのお味は結構コクがあってうまい、割とサッポロ黒ラベルとかに近いかもしれない。
体調の悪さとクラブハウスさながらの爆音と相まってこれは酔いそ〜
って思ってたらほどなくしていい感じに酔っ払ってきた。
ニキ達は隣でマリファナ吸ってる。
お前も吸うか言われたけどお断り。
酒とマリファナでブリったニキ達のテンションは、DIOみたいな奇声発しながら最高潮へ。

ニキ達はブリブリ、ワイは爆音とアルコールと体調不良でシナシナ。
そんなファッキンパーリーが3時間ほど続いて時刻は夕方18時頃。
ワイ流石に腹が少し減ったので、Aに言ったらCareem(UBERみたいなもの)で飯を頼んでくれた。
飯何がいいか聞かれたから、パキスタンっぽいものが食いたい、って要望したら、ほどなくして大量のチャパティ(25cmくらいのが5枚)とシャビシャビのカレーが届いた。

うまそーと思って食ったのも束の間、ワイは致命的なミスを3点犯すことになる。
1点目がカレーがクソほど辛かったということ。
何を隠そう、ワイは辛いものが全くもってダメなのである。
わさびや唐辛子、ありとあらゆるスパイス系を体が拒絶する軟弱個体なのである。
二点目、これは完全な知識不足だったのだが、カレーのほとんどが油でできているという点だ。
ワイが想像してたのは日本のバーモントカレーやジャワカレーなど。
そんなことなどあるわけないのに。
インドカレー屋を知らないのかお主は。
だがそんなものとは比較にならないくらいオイリー。
脂ギッシュとはこういう時のために使う言葉だと我思う。
シャビシャビカレーの正体は油かよ。
この2点により一口食ってまあまあ絶望した。
そしてもう一点あるのだが、、、
この時には全く気づかなかった、いや気付けないクソみたいな罠があるのだ。
それがこのカレーがとてつもなくヤバい環境で作られた(かもしれない)カレー、ということに他ならない。
どういうことか。
これはインドやネパールに行ったことがある人ならわかるはず、調理場らしきものの世紀末さに。
そこで1日中なのか、いつから使われているかわからない真っ黒に酸化している油。
これにスパイスを混ぜてカレーが作られている(可能性がある)のだ。
いやこれ、ほんまにあかんのですよ。
知らずに3点直撃満点のカレーをヒーコラ言いながら残すのも勿体無いからと頑張るワイ、
残念ながらチャパティは2枚しか食べられず、カレーも半分以上残す結果となってしまった。
後々知ったが、これはみんなでシェアして食べるものらしい。
だから高い(2000円くらいした)し、量も多かった。
それを一人で食べようとしていたのだから、ほんまに馬鹿かと。
てか言ってくれよ。
健康な状態でも食えるわけないやろこんな量。
そんなことを思いながら食事を強制終了し、時刻は20時、そろぼち今日の宿にいくことになった。
この日宿はAgodaで予約して1泊3000円ほど。
結構高い(当社比)。
何せ大体1泊1000円ちょっとくらい、安けりゃ500円とかで泊まっていたのだから。
まぁワイにとっては未知の国だし治安のことも考えりゃそれくらいは仕方ないと腹を括る。
AとC、社員であるもう一人のA(A’とする)が宿の近くまで付いてきてくれるらしい。
Cの車に再度乗り、いざパキスタン最初の宿へ。
陽が落ちるこの時間は結構渋滞していた。

さすが首都。
少し郊外を走るとあれだけ綺麗と思っていた道路が一変、
砂埃が舞って暗さと相まって先が見にくくなってきたのである。
道路整備が追いついていないのである。
あーきたきた、この感覚。
元々低い期待値が上がってから下がると、人間は絶望するものなのだよ。
まぁ、こんなもんだよね。
こういうのを知り始めてからが初めて旅のスタートだと思うから。
途中、交差点で車が止まるタイミングで赤子を抱き抱えたネキがホラーゲームさながら、車のサイドガラスを連続ノック。
どうやら乞食らしい。
AとCはフル無視。
そらそうよ。
車を発信させたらネキは諦めて別の車にダイレクトアタックを試みに行った。
少し走ってAが
「こういうのはパキスタンではよくある、だからお前も無視しとけ」
と助言をくれた。
「こんなんよくあることやと思うけど、無視でええんか?」
聞き返すワイ。
Aの返ってきた言葉はあまりにもそっけないものだった。
「働かざるもの食うべからず(意訳)」
そらなぁ。。。そうやねんけど日本と状況が違いすぎるでよ。。。
そう思ったのだが続けて、
「あいつらは赤子抱き抱えとったら金がもらえる思ってるんや。でもみんな働いとる。働こうとせん奴はアッラーが許さん。それにアッラーは偉大だからアッラーに乞うこと自体は当然許される。だが人間に乞うことはすごく良くないことや。だから俺たちは毎日アッラーに祈らなあかん。祈った上で、真面目に働くから金をもらえるんや。クルアーンにもそう書いとる。あいつらはアッラーの教えを守っとらんからそういう結果が待っとるんや。」
…なんとも至極真っ当なお言葉で。
イスラム教を大事にしてるからこそ、アッラーの教えを説いてるクルアーンは絶対なのだ。
その教えに背く行為をすることは、この国では社会やコミュニティのサポートを受けられないことを意味する。
すなわち死ぬしかないのだ。
残酷だが、これもまた現実。
村社会 LV.100 である。村八分なんぞ生ぬるい。
村規模でなく社会から抹殺同然の扱いを受ける。
それが「アッラー」ひいては「クルアーン」の重みなのである。
そしてその上で、出国前にTが言ってたことがある。
「この国では2つ大事なことがある。一つがお金、もう一つが人。そのどちらかがあればまず死ぬことはない。2つあればこの国はパラダイスになる」
…この意味がやっと本当の意味で身に染みてくることになる一面を見た瞬間だった。
まぁ、そんなこと言うてもお前らさっき酒飲んでたけどな!!!
なるほどお前らクルアーンを守った上で2つの大事なものも揃ってるから、豪勢なことができるんか。
金と人とアッラーの教えは、命よりも重い。
そんなこんなで宿についてA、C、A’と別れてついにチェックイン。
気温は大分冷え込んで8℃ほど。
体調も広州→ウルムチ搭乗直前くらいのバッドコンディションになってきていたので、一刻も早くチェックイン済ませてとにかく寝たかった。
チェックインをなんとか済ませ、部屋にイン。
待ち受けるはベッドが2台。

どちらもシングル。
ちょっと材質が硬いけど、まぁ悪くはない(当社比)。
しかし毛布が薄いのが1枚ずつ、しかも超絶臭い。
お前絶対洗ってないだろこれ。。。
シャワーとトイレはぼちぼち綺麗(当社比)。

ドアマン曰く、お湯もちゃんと出るしエアコンも効くとのこと。
これなら今日は大丈夫か…。
突っ込む気力もないのでドアマンにバイバイして足早に去ってもらい、早速エアコンをつけてみた。
、、、15分、20分経っても一向に暖かくならない。
嫌な予感がする。
フロントに行って「おいエアコンつかんやんけどないなっとんねん」みたいなんを言って、先ほどのドアマンに見てもらった。
どうやらエアコンが故障してるらしい。
いやいや舐めてるのか?動くいうたやん。
ちゃんと動作チェックやってへんねんけ。
聞いたら明日明るくなってからじゃないと直せない、だってよ。
舐めてんのかほんま。
これがパキスタンクオリティか。
外の気温は5℃、隙間風も吹き室内は非常に寒い。
ここにきて体調の悪さと相まってイライラモードのワイ。
もうええわって感じで出てってもらい、持ってきたインナー5枚ほど着込んで2枚のくっさい毛布に包まってその日は速攻就寝した。
時刻は21時半くらいだったと思う。
はぁ、とにかくやっと寝れる。
本当に疲れた。
初日からこれで先行きが思いやられる。
とにかく回復に努めよう。
パキスタンの洗礼を初日から嫌というほど受けたワイ。
シャワーを浴びる気力などなく床に伏して気絶。
部屋には体調不良で超絶シナシナになった漢一人、当然何も起きるはずもなく…
これがワイ氏2024年ホワイトクリスマス。
クリスマスとは無縁の世界で、ニキ達との男臭いイスラム式クリスマスを堪能(?)したのであった。

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